落陽 (祥伝社文庫)

明治から大正への移り変わりの時代、三流新聞記者の主人公はその最中で人々の時代の移り変わりを感じている。今平成から令和に移り変わっている今とどことなく似た気持ちになる。今度一万円札になる渋沢栄一らは東京に明治天皇を祀る神社の建立を計画する。ただし神社を作るには針葉樹林が必要で、東京はその地としては相応しくないと、農林大学本郷教授主張する。結局その主張は受け入れられず東京に決まる。じゃあどうするか。本郷教授は、「己の為すべきことを全うするだけ。明治を生きた人間として」と言い、建立に向けて尽力する。明治神宮に向ける様々な人々の想いを基に建立された明治神宮。市民からの献木にも支えられている。読了後は明治神宮に行きたくなり、行ってみた。原宿駅竹下通りの反対側を歩くと出てくる巨大な鳥居、そして巨大な森が出現する。百年後に完成すると本郷教授が言っていた、その百年後に自分は立っている。人々の想いが受け継がれ、百年経ったこの地は東京とは思えない安らかな森となっていた。